立体写真への道程

裸眼での立体視に出会ったのは高校の時、地理の資料に掲載されていた日本周辺の震源地とその深度を表した図。一見同じ2つの図が左右に並んだ資料だが、発生した震源を表す点の位置が左右で微妙に異なり、いわゆる平行法で見ると震源の深さが体感できるという、立体視を利用した地理資料であった。

右目と左目の違いを脳内で合成して立体的にモノが見える。距離を正確に掴むために肉食動物の両目は頭部前に並んで2個ついている。それは高校生として常識的に知っていたが、その原理を応用して平面図から立体を感じられることに感動したのだった。この体験以来、図書室などで同様なものを探したが、当時は発見できなかった。代わりに、購読していたカメラ雑誌の作例などで同じ場面を2枚並べて掲載している写真を平行法で見てみたり交差法で見てみたりして立体視を試みたりしたものだった。(遠い目)

そんな中、脳内リゾートを謳い、ドギついカラーのドットが一面に描かれたCGの中に立体視によって図柄を浮かび上がらせる本が話題になった。本当は立体写真が欲しかったが、それでも一般に入手できる立体視の本を歓迎し、このまま立体写真へ流れが出来ることを期待しつつ立体写真に比べて魅力の乏しい立体CGを眺めていたのだった。

その昔、特にアメリカでは立体写真が流行して立体撮影用の2コマ同時に2つのレンズで撮影するカメラも多く販売された。確か、何かの資料で20世紀初頭のパリ万博風景を撮影した立体写真も見たことがある。骨董市でも戦前と思われる紙焼きの立体写真とビューアを売っていたりする。それくらい古くからあるものではある。しかし、現在廃れてしまったのは平行法や交差法などの立体視を体得する(大したことじゃないんだけど)必要があったり、非常にパーソナルなビューアで見たりなかなか広く普及するには地味な、とても地味な鑑賞法がハードルとなったのか、一般化しなかった。

同じことが立体映像でも起こっていて、初期の左右赤青のメガネで鑑賞した立体映画が偏光フィルターのメガネに変わり、現在の電子的な切り替えによる立体メガネになるわけだが、それぞれの世代で売り出しをかけるのだがいまいち浸透しない。

話は戻って立体GC。一過性のGCの立体視ブームに続いて、いくらか立体写真集は出たようだが女性の裸体など奇をてらったものばかりで購入には至らなかった。そうしている内に立体CGはもちろん立体写真も下火になり見かけることもなくなった。こうして、世の中に平行法と交差法という立体視の存在を少しだけ浸透させた功績を残しつつ、立体視ブームは終了したのだった。

世に無ければ自分で作る!という事で、カメラを2台並べて撮影する方法を検討するも、当時学生の身分での懐具合ではコストを理由に断念。代わりに2枚を連続して撮影する方法で代用した。つまり、1枚撮って横に移動しもう一枚同じ構図で撮影するという方法だ。これなら1台のカメラ、1本のフィルムで立体写真が出来る。実際に何枚か撮って楽しんだのだが、しかし、これでは被写体は静物か動くものの無い風景に限られるのだ。1枚撮影して2枚目を撮影している間に被写体の変化があれば、立体視した時に像がブレたり違和感を覚えたりする事になる。結局、自分で撮影する事の限界を感じてフェードアウトする。それ以来、偶然立体写真やイラストに出会っては関心が蘇るも、同じ思考ループに入り断念する繰り返し。立体視への情熱が大きく再燃することはなかった。

近年になってネットの時代・デジカメの時代として低コストな2台同時撮影を検討し、実際にD40中古を2台入手。しかし結局は同期させるのが手間なのと大きすぎて撮影行為が困難なことで結局断念。ベースプレートに小型とはいえD40を並べて撮影となれば3脚は必要だろうし、仮に手持ちで構えても仰々しくて職質ものだ。もうアカン。この時点でかなりモチベーションも消えかかっていた。しかし一筋の光明が・・・。

ネット上には数々の立体視を扱ったサイトが新旧かなりある。大概はヘビーユーザーの方が管理人でその内容にはとても付いて行けないマニアたちであるけれども、その中にヒントを見出すこともある。それが1つのレンズのフィルター枠に取り付けるステレオアダプターというもの。ペンタックスが用品の価格改定の際にいくつかのサイトでも採り上げられた今でも販売している事が奇跡のようなアイテムの中にこの3Dアダプターがあるのだ。これは最も一般的な52mmのフィルター枠を使って50mmレンズに取り付ければ、1フレームに2つの視差の付いた画像を写し込める。

原理は簡単で、アダプター内に設置された表面鏡が視差を持った2つの光軸の光を50mmレンズへ導き、それを画像素子(またはフィルム)へ結像するというもの。ファインダーでも2つの象が左右に並んで見えるのだ。単純だが十分な機能。リーズナブルで手軽。普通のカメラが軽量にしてコンパクトな3Dカメラとなる。
こんな奇特なアイテムが昔から販売されていて、価格も改定までホッタラカシであった。

いつディスコンされても不思議でなかったので早々に注文して確保したのだった。
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by oblivion2077 | 2014-04-07 15:56
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